「初対面でのやり取り」

4月から月に1日、支部の指定税理士として業務をしております。
 指定税理士とは、税理士会が税務支援の一環として設ける税務相談所において、来所された小規模納税者の方の記帳・税務指導を行う専任の税理士のことを言います。
 所属支部では、私を含め4人の税理士が各担当日ごとに納税者の方の相談を受けています。
 
 相談内容は、単純な記帳方法に関することから難解な税務の質問まで様々ですが、どんな質問にも慎重に回答するよう心掛けています。
 当然ながらこのことは日常業務でも同様に求められます。
 ただ、相談所に来所される方は初対面で、事業内容や家族構成などの基礎情報を何も知りません。
 また、性格も分からないため、細かい回答を求めているのか、それとも大枠を掴めれば良いのか等の判断も容易ではありません。
 そのため、相談者の方の情報を多く掴み、適切な回答をするよう細心の注意を払っています。

 さらに、一般的な見解での回答という条件で、電話相談にて質問に答える場合もあります。
 電話での相談となると、より回答が難しいうえ、相談者の方の私への印象は声や話し方だけで決まってしまいます。
 適切な回答をすることはもちろん、声のトーンやテンポにも注意が必要となります。

 指定税理士の業務を始めて、初対面でのやり取りはやはり難しいと実感しました。
 初対面であるが故に、回答の仕方や接し方により、その方が持つ私への印象は良い方向にも悪い方向にも大きく傾きます。
 良い印象を持ってもらうためには、適切な回答と正しい接し方が共に必要です。
 これからの指定税理士での業務を通じて、初対面の方とのコミュニケーション能力を高めていきたいです。

「子供が学童に入りました」

この4月から子供を学童に行かせることにしました。
 時短で仕事をすることにより子供には極力負担をかけないように努めてきましたが、それでも放課後に1人でお留守番をしている日が結構あり、子供にとっても自分にとっても何だか中途半端だなと思ったからです。
 学童の見学に行ってみると、皆がのびのびと遊んでおり、子供はここに通いたい!と強く希望しました。
 名古屋市の学童は公営ではなく負担は小さくないので迷いましたが、指導員さん達が愛情を持って見守ってくれている点と、安心して外遊びができる環境に惹かれ、入会に至りました。

 入ってみると、子供は思った通り大変楽しく過ごすことができているらしく、私が家にいる日でも学童に行きたがるほどです。
 遊び方もドッジボールや秘密基地作りなど、「こういう風に遊んでほしい」と思う健康的な遊びで体や五感を使っているようで、テレビやゲームのない環境がとてもいいなと感じます。

 私にとっても、今までは何があっても自分しかいないという思いで育児をしていたところ、学童が頼れる存在として、予想以上に大きな余裕をもたらしてくれています。
 勤務時間も伸ばすことができ、忙しい時期など早速助かっています。
 
今まで「いずれもっと仕事をしたい」と思ってきましたが、学童のおかげで思ったよりも早く前進することができそうです。

「名義株とされないために」

 最近のニュースで、保有していた株式が名義株にあたるとして創業者長男が相続財産の申告漏れを指摘された事案はご存知でしょうか。
 追徴税額あわせて40億円にのぼるとして大きな話題になっていました。

 名義株については、金額の大小に関わらず、どの会社にも起き得る問題です。
 今回のように、創業者の相続の場合、相続財産の多くを自社株が占め、その自社株が創業者の財産なのか、創業者の相続人の財産なのかの事実認定が難しい場合があります。
 名義株とは相続人名義の株式であっても、実際の運用を行っていたのが被相続人であるとして、相続財産に加算されるものです。
 相続税調査の場面で指摘されるケースが多く、その時には被相続人が死亡しており実際の運用を行っていたのはどちらかという判断が難しいのが実情です。
 そこで名義株と指摘されないためには、取得時や保有時、配当時など、それぞれの場面で実際の所有者が相続人であると証明できるかがポイントとなります。

 相続財産を計画的に贈与していくことは重要なことですが、とりわけ自社株については被相続人だけの問題ではありません。
 その会社が末永く存続していくためにも、より計画的で慎重な対応が必要になると思われます。
 せっかくの贈与財産も渡し方を間違えると「名義株」として、なかったものとされてしまいます。
 のちのち疑いの目を向けられることのないように、名義人である本人が金銭の支払いや受け取りを行うのは勿論のこと、些細なことでも書面を残しておくなど慎重な対応が求められています。

「学校法人の世界」

 最近、学校法人森友学園に関するニュースが減少してきたが、国が国有地を不当に安く払い下げたのではないか、校舎建築に関する補助金を不当に得ていたのではないかと、問題になっていたものである。

 私も、学校法人の監査を引き受けている身なので、決して他人事ではない。
 そもそも学校法人(私立学校)とは公益法人の一つであり、私立学校法に基づき設立された法人である。 なぜ、問題が大きくなったかというと、原因は多数あると思うが、補助金が絡むことも一つの大きな要因であると思う。
 要するに、我々の納めた税金である。
 学校法人の運営に必要な資金、つまり、校舎の建築や教育関係の備品の購入、教員の人件費などは、生徒からの授業料や、国・都道府県などからの補助金により賄われている。
 補助金の割合は大きく、授業料を除くと大半が補助金であることも珍しくなく、一般企業とは異色の世界である。

 国や都道府県などから一定以上の補助金を得ている学校法人には、公認会計士による監査が必要になるのだが、私もその一翼を担わせていただいている。
 森友学園は一つの取引につき3通りの契約書を作成していたという報道もあり、本当か嘘かわからないが、にそこまで書類を用意されて嘘をつかれたり、非協力的な対応だと、監査をしても発見できない。
 そもそもこのようなことが問題になる学校法人を認可すべきではないだろう。

 会計税務のお手伝いは税金の納付側としてであるが、学校法人の監査は、補助金(税金)の使い道が正しくなされているかという視点の業務と言える。
 税金を納められているお客様の気持ちを汲み取り、有効に使われているか、正しく使われているか、しっかりチェックしなければならないとあらためて感じた。

「役員報酬の定期同額給与改正」

 平成29年度税制改正法が3月27日に参議院本会議で可決され、成立しました。
 改正項目の一つとして、役員報酬の定期同額給与についても見直しが行われました。

 役員報酬は毎月同額でなければ経費として認められず、金額の改定は基本的に事業年度開始から一定期間内に行う必要があります。
 役員報酬を増減させることによって、法人の所得を操作することを防ぐためです。

 今回の税制改正では、「毎月同額」の対象範囲が若干拡大されました。
 今までは給与の「額面」が同額でなければ経費になりませんでしたが、改正後は「手取額」が同額の場合でも、定期同額給与として経費計上が認められます。
 「手取額」というのは、額面から源泉所得税や住民税、社会保険料等を控除した後の金額です。
 例えば、6月から住民税が増加して手取額が減るような場合でも、その分額面を増やして手取額が今までと同じ金額になるように役員報酬を設定することができます。
 このような変更であれば、期中いつでも行うことが可能です。

 国内で手取額からグロスアップして給与計算をしているのは、外国人労働者が多いと思いますが、前年所得をベースに翌年課税される住民税が大幅に増加した場合、手取額を保証してもらいたい場合は、この新しい制度を利用しても良いと思います。

「サービスについて考える」

ヨーロッパでは比較的、労働者権利が経営者利益よりも重視される傾向が強く、仕事観のみならず法律にも色濃く反映されています。
 
 情報通信の発達によりオフィスに縛られない柔軟な働き方が可能になり、即時対応・業務効率化でサービス向上に役立っています。その反面、即時対応が当然、という感覚を持った人が増え、帰宅後・休日の対応を余儀なくされるといった悩ましい問題もあります。
 フランスでは勤務時間外はメールチェックしない「つながらない権利」が今年から施行されていますし、日本でも一部の企業が実施しているようです。
 ドイツには認められた時間帯以外は店を開けてはいけない、という「閉店法」があり、労働時間の規制と、余暇の時間確保に役立っています。
 
 日本では、今まで労働者権利より経営者利益の優先傾向がありましたが、人手不足を背景に大きく変化しています。
 
 ニュースでも大きくとりあげられていますが、大手宅配業界が人手不足を理由に、不採算顧客先への条件見直し交渉をすすめています。
 飲食業も長時間労働改善のため、24時間営業の廃止、営業時間の短縮を進める企業が増えています。
 
 今後は、サービスを見直す企業が増えるので、今までのありがたみや便利さを改めて感じる機会も増えると思いますし、逆に自分にとって無くても支障がない過剰なサービスに気付くこともあると思います。
 サービスを求めることによる相手の負担への配慮、自分にそのサービスは必要なのか?必要なサービスに対して相応の金額を支払っているか?を個人レベルでも考えるいい機会なのだと思っています。

「税理士を知ってもらうために」

どの業界にも同業者団体が存在しているように、我々税理士の業界にも名古屋青年税理士連盟(以下、名青税)という団体があります。
 この名青税は、基本的に40歳以下である有志の若手税理士によって構成され、会員相互の親睦を深めることや税理士制度・税法の研究などを目的として活動をしている団体です。

 昨年に税理士登録をしてからは一般部員としてこの名青税に所属をしていましたが、今年度は副部長として活動をすることになりました。
 私自身、名青税の中でもかなり年少であるため、副部長という立場は身の引き締まる思いですが、税理士業界の更なる発展のため団体活動に貢献していければと思います。

 また、名青税での活動は、税法の研究による自己研鑚などはもちろんですが、大学生などの若い世代に税理士という仕事を知ってもらう大きなチャンスであると思います。
 例えば、大学生向けの税理士職業セミナーやディベート大会という活動がありますし、税理士会においても租税教室といった活動があり、若い世代と交流する機会が多くあります。

 平均年齢が60代とも言われる税理士業界ですので、名青税の会員数も減少傾向にあります。
 名青税・税理士業界全体の活性化にとって、より多くの若い世代に税理士を目指してもらうことは必要不可欠であると思います。
 微力ではあるかもしれませんが、名青税でのこれらの活動を通して、若い世代に少しでも税理士という仕事に興味を持っていただけるようこれから努めていきたいです。

「ゼミ同窓生とのひととき」

 先日、大学のゼミの教授が定年で退官されるということで、お祝いの会に参加するため東京へ行ってきました。
 はじめの挨拶で先生は、「大学を出て就職すると、周囲は皆ライバルということになるので、友人は作りにくい。今日は私(教授)とは話さなくてもいいから、旧交を温める時間にしてほしい。」とおっしゃいました。

 私の世代は「就職氷河期世代」と言われ、就職活動には大変苦労した覚えがあります。
 特にバブル崩壊で痛手を負った金融機関への就職は厳しく、内定していた証券会社が大学卒業前に破綻、就職留年を余儀なくされた同級生もいました。
 就職後もリーマンショックが起きたり、金融再編成により合併が続いたりと、平坦な道のりではなく、新卒時の就職先と同じ名前の会社に今もいる人はごくわずかでした(同級生では製造業に就職した1人だけ)。
 同級生たちと話をしていると、どの人も年齢を重ねた分それぞれ苦労してきたのだろうなという感じがして、人間的に丸くなったなあという印象を持ちました。
 
 名古屋にいると同窓の方にお会いすることはあまりないので、出身大学を意識することはほとんどないのですが、先生の言われたとおり、旧友というのは良いものだなと改めて感じました。
 それから、それぞれのフィールドで活躍する皆にまた笑顔で会えるよう、自分なりに今与えられた役割を全うし、納得のできる生き方をしていきたいと思いました。

「定時株主総会の重要性」

 株主総会の話題を耳にする時期となりました。日本では、3月末日を決算日とする企業が大多数を占めているため、株主総会は6月下旬に集中しています。

 現行の法人税法では、法人は事業年度終了の日(決算日)の翌日から2ヶ月以内に申告書を提出しなければならないと決められたうえで、特例として特別の事情がある場合には税務署への申請に基づき提出期限を1ヶ月間延長することができるとされています。これは、決算から株主総会までの期間が短いと、企業と株主との対話が十分にできないということが背景にあります。
 この特例は、定款を変更されたうえで税務署へ届出をすることにより、中小企業にも適用されることはご存知でしょうか。

 決算後に開催される定時株主総会は、決算報告書の承認や役員報酬の決定、利益処分の方法など様々な重要事項を決定する場となっております。特に役員報酬額については、特別の事情がない限り、この時期に決定した金額が1年を通して支払われることになります。この先の利益を見通して報酬額を決定することは容易なことではないと思います。特に中小企業の場合は、企業と株主が同一ということが往々にしてあります。しかし、改めて株主という立場で企業や決算を眺めてみると、また見え方も違ってくるかもしれません。

 定時株主総会の重要性を再確認し、報酬の決定などお困りのことがございましたら、ご相談いただければと思います。

「信託の歴史から」

 最近よく耳にする「民事信託」の起源は諸説あり、一説に中世ヨーロッパの十字軍といわれています。
 兵士が遠征中の間ともしもの時は、残された家族のため、信頼できる友人に金銭、不動産を託して十字軍の遠征に向かいました。
 財産を託された友人は、遠征の間は自らの名前と責任でもって財産管理・運用し、友人兵士の家族が困らないよう援助し、兵士が無事帰ってきた場合は財産を兵士に戻す、ということが一般的に行われていたようです。
 中世イギリスでも、信頼できる友人へ土地を譲渡し、土地の収益を教会へ寄付するよう託す方法(ユース)がありました。
 宗教心から土地を教会に寄付する習慣がありましたが、教会所有になると税金がとれなくなるので寄付禁止になりユースが普及したようです。
 このユースはアメリカで遺言活用・遺産管理として普及し、明治時代に日本へ入ってきました。
 自分の財産管理を信頼できる人へ託す、という考え方は歴史的にも世界中にあり、必要で大切な制度だとよくわかります。
 
 日本では、所有者、管理者、利益を受ける人の3者関係が登記、税制が複雑でなかなか普及が進みませんでしたが、平成18年の信託法改正により少しづつ活用事例が増えてきているようです。
 高齢の方で不動産経営をしている場合、将来認知症になると売買など公的な手続きができなくなります。相続まで待たなくても、信託で管理・処分の権限を委託し、不動産収入は今までどおり自分に入るようにすることも可能です。法人ではなく個人でもこのような財産管理が可能になります。 
 前述の歴史的な事例をはじめ、長生きリスク、会社存続のための事業承継問題、遺言では限界のある財産管理など、信託では柔軟に対応できるといわれています。

 信託法、と法律から入ると難しく感じますが、歴史的背景、起源などを知ることによって本質や良さの理解が深まりました。
 お客様からのさまざまなご相談に対し、選択肢の一つとしてご提案できるよう情報収集に努めていきたいと思います。