「企業評価から考える」

ここ5年ほどで人事関係の「お墨付き」認定の種類が増えました。
 国の認定では・・・
 旬な安全衛生優良「ホワイト企業」、株価が上がるといわれる「健康経営銘柄」、新卒獲得には女性活躍推進「えるぼし」、求人有利と言われている若者応援「ユースエール」認定など色々あります。

 民間の認定は、良いものから不名誉なものまで色々ありますが、「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」というものがあります。
 「人(1従業員とその家族、2外注先・仕入先、3顧客、4地域社会、5株主の5者)を幸せにする経営」ができる会社を1社でも増やそうという趣旨で7年前に顕彰制度ができました。
  エントリー書類調査(過去5年以上にわたって、リストラや労災事故がない、障碍者雇用を満たす、黒字であるなどの要件)をパスするとヒアリング調査があり受賞企業が決まるようです。
 認定を受けること自体が目的ではありませんが、受賞会社の理念・取り組み事例は大変参考になるものばかりです。良い状態で止まることもないですし、受賞に至る試行錯誤の実例も含め勉強になります。
 
 世相を反映した評価指標の「認定」が増え、受賞により事例の公表になり、参考にする会社が増えることは好循環です。このような情報は通常、会社選択時に得られ難い「職業観」に大きな影響を与えることが可能です。
 
 国の勧める「働き方改革」の捉え方は個々・会社により様々ですが、時代に逆行?しそうな「時間も忘れるほど仕事に没頭」というスタイルも根強い支持があります。人生を考えると、このような時期がある方が幸せなんだと個人的には思います。
 
 個々が働き方・生き方をより主体的に考えるべき世の中になるので、「認定」はますます重視されると思っていますし、とても楽しみです。

「大丈夫ですか?」

 今年7月に、興味深い最高裁判決が出ました。
 年俸1700万の医者が残業代請求し、高裁では負けたものの最高裁で勝ったのです。

 以前、年俸5000万以上の外資系金融マンが残業代請求した裁判では負けているので、高収入の場合は残業代込でOKと思っている人も多いのではないでしょうか?
 しかし今回の争点は金額ではないのです。
 通常賃金と割増賃金の内訳不明のため、割増賃金を支払ったとはいえない、という趣旨でした。
 
固定残業代(割増賃金)を基本給や手当に含める会社は多くあり、下記のメリットがあります。
・効率よく仕事をこなせば、給料は減らずに労働時間が減る
・効率の悪い従業員に残業代を一定時間払わなくて良い
・恒常的に生じる残業時間に対する対策(片付け・清掃・早朝会議など)
ただ、判例のように導入していると思っている会社と合法に導入・運用されているケースは必ずしも一致しません。

 下記①②に当てはまる会社は要改善です。
①残業代含む、とだけ記載
 ⇒今回の裁判と同じケースです、職安求人では分離明記しないと受付してもらえませんし、具体的に記載必要です。
②基本給に残業代○時間含む
 ⇒固定残業代を除いた基本給の額の明示、計算方法の説明が必要です。
  会社により、諸手当との関係から残業計算がわかりにくくなるケースが多くあります。
③基本給とは別に○時間相当の固定残業手当を払う
 ⇒厚生労働省記載例です。
 ※○時間は会社で決めます、一般的に30時間までは(法律上の残業年間上限360時間÷12ヶ月)、職安求人でも問題なく明記できる上限時間です。それ以上の時間は色々クリアすべき問題あります。
 もちろん○時間を超えれば追加支給必要です。
 
 入社時に合意しても、人間ですので疑問・不満に思う時期もあります。
 不本意な揉め事にならないような賃金設計にしておきたいですね。

【厚生労働省参考HP】
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000146838.pdf

「経営理念」

「経営理念」とは事業経営を行う目的は何か、何のために経営を行うのか、 どのような会社を目指すのか等を述べたものです。 

 今年は就業規則作成の依頼が何件かあり、経営理念をはじめ、今後の方針など労務管理の視点から会社の基盤について深く関わる機会をいただいています。
 「規則」はどうしても堅苦しい、窮屈なものになりがちですが、経営理念や目標の共有が第一で、そのための規則という思いから、規則の最初に社訓など「経営理念」を大きく載せるようにしています。
 
 経営理念は社内で共有されるだけでなく、広告でキャッチフレーズにして伝えたりと社外アピールにもなり、企業の印象を大きく左右します。
 石田会計のお客様の経営理念も、シンプルでわかりやすいもの、プロ意識の高い崇高なもの、感性に響くもの、共感できるものなど色々なタイプのものがありますが、どれも経営者の強い思いが詰まったステキなものばかりです。
 石田会計の経営理念もHPのトップに「敷居が低く、明るい雰囲気の会計事務所・経営を総合的にサポートする会計事務所・スタッフを大切にする会計事務所」とわかりやすく出ております。
 私を含め、経営理念に共感するスタッフが集まり、そのような会計事務所にお願いしたいと思うお客様で成り立っています。
 
近江商人の経営思想に「三方よし~売り手よし、買い手よし、世間よし~」売り手の都合だけで商いをするのではなく、買い手が心の底から満足し、さらに商いを通じて地域社会の発展や福利の増進に貢献しなければならない、というものがあります。
 初めて知った時、短くてわかりやすく、ビジネスはこうあるべきだと、大変感銘を受けたことを覚えています。2者間の利害関係だけでなくその先を考えることは、悩んだ時の判断基準の一つになり大変役立ち、勉強になっています。

「感動」ビジネスに学ぶ

先日、ずっと行ってみたかった旭川市の旭山動物園に家族で行ってきました。
 動物園の常識を覆す「行動展示」で有名ですが、その魅力を実感してきました。
 
 動物園といえば、姿を見せる「形態展示」が多いのでパンダ・コアラなどスター性のある動物が集客のカギになります。
 「行動展示」とは動物の生態やそれに伴う能力を、自然に誘発させて観賞者に見せるように工夫した展示です。
 
 例えば、アザラシが下から上にスィーと垂直に泳げるマリンウェイ(円柱水槽)があります。
 5分程マリンウェイの前にいればアザラシと数回目が合いますし、見ているのか見られているのかわからない感覚も新鮮です。
 教えられた芸ではなく、もともと垂直泳ぎが得意なので楽しそうなのです。
 地元の動物園にもアザラシがいますが、横たわっている姿や、水平に泳いでいる姿を上から見るだけで、のんびり過ごしてかわいいなぁ、という印象でした。
 旭山の楽しそうなアザラシを見てからは、実は退屈なのではないか?マリンウェイがあれば、ほぼ静止状態のコアラに勝てるのでは?と思うのです。 
 私の中でアザラシといえば横たわった姿ではなく水中での垂直の姿が基本形になりアザラシ観も大きく変わりました。

 経営難による閉園の危機に「利益第一」から「お客様の感動」に方向転換、動物本来の魅力を伝えることに徹し、動物ショーを行わない、など色々なポリシーがあるようです。   V字回復の来園者数は地域経済効果となり、全国の動物園に影響を与え、様々な賞を受賞しています。
 
 数年前に行った、蒲郡にある「竹島水族館」も廃館の危機を水族館プロデューサーによる「ショボイを武器に」のコンセプトで起死回生し、一時は年間12万だった入場者数も今では30~40万人と人気スポットです。手作りのPOPや解説が工夫され、飼育員さんの魚への愛情が伝わるステキな水族館です。

 何事も資金がないと不利なケースは多いと思いますが、経営危機をきっかけに違う角度からのアプローチ、差別化により大きなチャンスがあるのだと、大変考えさせられるものがあります。
 年齢を重ねると感度が鈍る?ので、価値観が変わるような「感動」体験の機会は貴重ですし、ビジネスチャンスの大きなポイントなのだとしみじみ感じました。

「ヒヤリ・ハット」

税務調査は利益状況に応じて行われるケースが多いですが、労働基準監督署の臨検(調査)は労働者がいれば対象になります。
 タイムカード、就業規則、労働・残業時間管理など書類整備の他、労働環境の調査もあり日々の管理・整備が大切になります。
 
 臨検は主に定期的なもの、通報によるもの(関係者からの密告など)、労災事故が多い場合に行われます。
 定期的なものは歓迎?できるくらいの余裕が理想ですが、通報・労災による調査は是非避けたいものです。

 重大事故を防ぐための教訓として「ハインリッヒの法則」という有名な経験則があります。
別名「1対29対300の法則」とも呼ばれており、1件の重大な事故・災害(=重傷者が出る程)が発生した場合、29件の軽微な事故・災害(=軽傷者が出る程)が既に発生しており、300件のヒヤリ・ハット(=怪我人は出ないものの、ヒヤリとした出来事)が既に発生しているというものです。
 アメリカの損保会社にて技術・調査部の副部長を務めていたハインリッヒが約5,000件にも及ぶ労働災害の内容を調査した結果発見した法則です。
 重大な災害や事故には至らないものの、直結してもおかしくない一歩手前の事例(ヒヤリ・ハット)の発見は労災事故に限らず、個人レベルでもたくさんあると思います。
 
軽微なミスを改善しないと、大きなミスに繋がる、ということを常に意識できる従業員を増やすことは大切ですし、ヒヤリ・ハット体験を「大事にならずに良かった」と個人レベルの安堵で済ますのではなく、積極的に共有し改善できるような職場作りが大切です。
 既に、改善対策として導入している会社も多いと思いますが、社内整備の一つとして参考になればと思います。

「年度更新時期ですね」

今年も労働保険料の申告時期になりました。
 景気がよく、失業率も低いので今年も雇用保険料率低下で、保険料負担が減っている会社も多いのではないでしょうか。
 
 労災保険については通勤災害補償の改正がありましたので少し紹介します。
労災保険は仕事中(業務災害)と通勤中(通勤災害)の怪我などに支払われる全額会社負担・政府運営の保険です。

 通勤災害は基本的に、職場と住居地の「合理的な通勤経路」での事故に対して補償があります。
 例えば、仕事帰りに友人と飲み会にいくと通勤経路の「逸脱」、通勤経路途中の習い事などは通勤「中断」とされ、その後の帰宅経路での事故についても補償対象外になります。

 原則、「寄り道」に厳しい労災ですが、日常生活上必要な行為の「中断」については、中断から通勤経路に戻った際の事故は労災補償とされています。
 具体的には・・・
通勤途中の保育園の送迎、日用品の購入、選挙に立ち寄る、病院に寄る、継続的な要介護親族の介護などが認められています。
 
 今年の1月からは要介護親族の要件が緩和されています。
以前は、要介護状態であっても孫、祖父母、兄弟姉妹は同居・扶養要件がありましたが、
今年から配偶者・子・父母・配偶者の父母と同様に同居・扶養要件なしとなりました。

 育児・介護離職を防ぐ趣旨で、育児・介護休業法が頻繁に改正されていますが、労災の面からも仕事と育児・介護の両立に対して補償が手厚くなっています。
 労災対象ではない事故については健康保険などの補償範囲ですが、労災の補償内容は比較にならないほど充実しています。

 労災保険は社会保険料や雇用保険のように給与天引きがなく、従業員さん自身が加入しているという意識は高くないかもしれませんが、この時期には知識を深めるいい機会にしたいですね。

国のお墨付き「ブラック」企業増えそうです

 5月10日より、厚生労働省が労働法に違反した企業のホームページ公開を始めました。
昨年から社名公表制度はあったのですが、労働法違反送検後の公表なので、是正勧告の1%ほどでした。

 今回の公表基準は「社会的に影響力の大きい企業で違法な長時間労働が相当数の労働者に認められ、一定期間内に複数の事業場で繰り返されていること。」とされており、悪質な違反があれば、送検前にも社名公表がされることになります。

以前、大手飲食チェーンが民間選出のブラック企業大賞授賞した際、翌年の新卒採用は計画の半分以下に、創業以来初赤字に転落、とかなりの企業ダメージを受けています。
ノミネートされるだけでも不名誉ですが、大賞の他にブラックバイト賞、業界賞など色々ありますので授賞理由、ノミネート理由などを知るのも大変勉強になります。

民間選出のダメージも相当ですから、国のブラック認定となるとさらに影響は大きいと想定されます。
 今のところ、送検前の公表については中小企業は除外されていますが、罰金、送検後の社名公表は従来通りです。
 中小企業では社会的制裁よりも、対応に追われたり、従業員から過去の残業代請求があると深刻に困る会社も多いのでは、と思います。
 採用難のご時勢ですので離職されても困りますし、他人事ではありません。

働き方改革・健康経営に意欲的な企業には認定・表彰などインセンティブが検討される一方で、そうでない企業に対しては、社会的制裁が厳しくなっています。

 会社側も採用難で残業が思うように減らせない企業も多いと思います。
効率的な設備の導入や、業務の効率化の見直しにも助成金がありますので、前向きに検討できるといいと思います。

「サービスについて考える」

ヨーロッパでは比較的、労働者権利が経営者利益よりも重視される傾向が強く、仕事観のみならず法律にも色濃く反映されています。
 
 情報通信の発達によりオフィスに縛られない柔軟な働き方が可能になり、即時対応・業務効率化でサービス向上に役立っています。その反面、即時対応が当然、という感覚を持った人が増え、帰宅後・休日の対応を余儀なくされるといった悩ましい問題もあります。
 フランスでは勤務時間外はメールチェックしない「つながらない権利」が今年から施行されていますし、日本でも一部の企業が実施しているようです。
 ドイツには認められた時間帯以外は店を開けてはいけない、という「閉店法」があり、労働時間の規制と、余暇の時間確保に役立っています。
 
 日本では、今まで労働者権利より経営者利益の優先傾向がありましたが、人手不足を背景に大きく変化しています。
 
 ニュースでも大きくとりあげられていますが、大手宅配業界が人手不足を理由に、不採算顧客先への条件見直し交渉をすすめています。
 飲食業も長時間労働改善のため、24時間営業の廃止、営業時間の短縮を進める企業が増えています。
 
 今後は、サービスを見直す企業が増えるので、今までのありがたみや便利さを改めて感じる機会も増えると思いますし、逆に自分にとって無くても支障がない過剰なサービスに気付くこともあると思います。
 サービスを求めることによる相手の負担への配慮、自分にそのサービスは必要なのか?必要なサービスに対して相応の金額を支払っているか?を個人レベルでも考えるいい機会なのだと思っています。

「信託の歴史から」

 最近よく耳にする「民事信託」の起源は諸説あり、一説に中世ヨーロッパの十字軍といわれています。
 兵士が遠征中の間ともしもの時は、残された家族のため、信頼できる友人に金銭、不動産を託して十字軍の遠征に向かいました。
 財産を託された友人は、遠征の間は自らの名前と責任でもって財産管理・運用し、友人兵士の家族が困らないよう援助し、兵士が無事帰ってきた場合は財産を兵士に戻す、ということが一般的に行われていたようです。
 中世イギリスでも、信頼できる友人へ土地を譲渡し、土地の収益を教会へ寄付するよう託す方法(ユース)がありました。
 宗教心から土地を教会に寄付する習慣がありましたが、教会所有になると税金がとれなくなるので寄付禁止になりユースが普及したようです。
 このユースはアメリカで遺言活用・遺産管理として普及し、明治時代に日本へ入ってきました。
 自分の財産管理を信頼できる人へ託す、という考え方は歴史的にも世界中にあり、必要で大切な制度だとよくわかります。
 
 日本では、所有者、管理者、利益を受ける人の3者関係が登記、税制が複雑でなかなか普及が進みませんでしたが、平成18年の信託法改正により少しづつ活用事例が増えてきているようです。
 高齢の方で不動産経営をしている場合、将来認知症になると売買など公的な手続きができなくなります。相続まで待たなくても、信託で管理・処分の権限を委託し、不動産収入は今までどおり自分に入るようにすることも可能です。法人ではなく個人でもこのような財産管理が可能になります。 
 前述の歴史的な事例をはじめ、長生きリスク、会社存続のための事業承継問題、遺言では限界のある財産管理など、信託では柔軟に対応できるといわれています。

 信託法、と法律から入ると難しく感じますが、歴史的背景、起源などを知ることによって本質や良さの理解が深まりました。
 お客様からのさまざまなご相談に対し、選択肢の一つとしてご提案できるよう情報収集に努めていきたいと思います。

中小企業の健康経営事情

 「健康経営」「ホワイト企業」など耳にする機会が増えました。
今年からは上場企業以外の法人も「健康経営優良法人~ホワイト500~」として認定・公表制度が始まり、より身近になります。

  石田会計も昨年から協会健保の「健康宣言チャレンジ事業所」認定を受けています。
 現状の取組は、がん検診を付加した定期健康診断の実施、法令順守、有給休暇取得支援、インフルエンザ予防接種の費用負担、常備薬・空気清浄機の設置などです。
  法的にストレスチェック対象規模ではありませんが、会議の時間を利用し労働法、メンタルヘルス研修も実施しています。
  健康宣言前からの取組ですが、今後も色々考えていきたいと思っています。
 
  先日、あいち健康経営会議に参加し、県内企業の取組紹介がありました。
  建設業(70人規模)の取組がステキでしたので少し紹介します。
 男性が多く、禁煙・メタボ対策として、禁煙手当の支給、野菜を多く食べる、体重測定を推進しているようです。
 現在50代の社長が「自分が見届けることは出来ないが、新卒社員が定年まで健康に働けるようにとの思いで今出来ることに取り組んでいる」と語っていたのは心に響きました。社内敷地に小さな野菜畑を作り、家庭菜園が趣味の社員にアドバイスを受けながら、社長自らも雑草抜きなどのお手入れをしているようです。
 体育学部出身社員によるストレッチ講習、シェフ歴のある社員による野菜レシピ紹介・実食など社員の得意分野を活かした取組に親近感が湧きました。
 
  社員の健康を大切にするとは数字など目下の話ではなく、社員と会社への愛情であり、そんな会社で働いている人は幸せだなぁ、と感動しました。
 その効果として、家族の安心、業績もアップ、取引先の評価、新卒採用増加、モチベーションアップといいことばかりです。
  会社により、問題点・改善策は色々だと思いますので、見習えるところは積極的に取り入れていきたですね。