「信託の歴史から」

 最近よく耳にする「民事信託」の起源は諸説あり、一説に中世ヨーロッパの十字軍といわれています。
 兵士が遠征中の間ともしもの時は、残された家族のため、信頼できる友人に金銭、不動産を託して十字軍の遠征に向かいました。
 財産を託された友人は、遠征の間は自らの名前と責任でもって財産管理・運用し、友人兵士の家族が困らないよう援助し、兵士が無事帰ってきた場合は財産を兵士に戻す、ということが一般的に行われていたようです。
 中世イギリスでも、信頼できる友人へ土地を譲渡し、土地の収益を教会へ寄付するよう託す方法(ユース)がありました。
 宗教心から土地を教会に寄付する習慣がありましたが、教会所有になると税金がとれなくなるので寄付禁止になりユースが普及したようです。
 このユースはアメリカで遺言活用・遺産管理として普及し、明治時代に日本へ入ってきました。
 自分の財産管理を信頼できる人へ託す、という考え方は歴史的にも世界中にあり、必要で大切な制度だとよくわかります。
 
 日本では、所有者、管理者、利益を受ける人の3者関係が登記、税制が複雑でなかなか普及が進みませんでしたが、平成18年の信託法改正により少しづつ活用事例が増えてきているようです。
 高齢の方で不動産経営をしている場合、将来認知症になると売買など公的な手続きができなくなります。相続まで待たなくても、信託で管理・処分の権限を委託し、不動産収入は今までどおり自分に入るようにすることも可能です。法人ではなく個人でもこのような財産管理が可能になります。 
 前述の歴史的な事例をはじめ、長生きリスク、会社存続のための事業承継問題、遺言では限界のある財産管理など、信託では柔軟に対応できるといわれています。

 信託法、と法律から入ると難しく感じますが、歴史的背景、起源などを知ることによって本質や良さの理解が深まりました。
 お客様からのさまざまなご相談に対し、選択肢の一つとしてご提案できるよう情報収集に努めていきたいと思います。