「名義株とされないために」

 最近のニュースで、保有していた株式が名義株にあたるとして創業者長男が相続財産の申告漏れを指摘された事案はご存知でしょうか。
 追徴税額あわせて40億円にのぼるとして大きな話題になっていました。

 名義株については、金額の大小に関わらず、どの会社にも起き得る問題です。
 今回のように、創業者の相続の場合、相続財産の多くを自社株が占め、その自社株が創業者の財産なのか、創業者の相続人の財産なのかの事実認定が難しい場合があります。
 名義株とは相続人名義の株式であっても、実際の運用を行っていたのが被相続人であるとして、相続財産に加算されるものです。
 相続税調査の場面で指摘されるケースが多く、その時には被相続人が死亡しており実際の運用を行っていたのはどちらかという判断が難しいのが実情です。
 そこで名義株と指摘されないためには、取得時や保有時、配当時など、それぞれの場面で実際の所有者が相続人であると証明できるかがポイントとなります。

 相続財産を計画的に贈与していくことは重要なことですが、とりわけ自社株については被相続人だけの問題ではありません。
 その会社が末永く存続していくためにも、より計画的で慎重な対応が必要になると思われます。
 せっかくの贈与財産も渡し方を間違えると「名義株」として、なかったものとされてしまいます。
 のちのち疑いの目を向けられることのないように、名義人である本人が金銭の支払いや受け取りを行うのは勿論のこと、些細なことでも書面を残しておくなど慎重な対応が求められています。