「指標の話」

東京証券取引所には「JPX日経インデックス400」という株価指数がある。
少し前に導入されたもので、自己資本利益率(ROE)や営業利益を重視した銘柄選定方法に特徴があるようだ。
海外投資家の間ではROEは投資判断をする際の重要な要素のひとつとされており、「JPX日経インデックス400」は海外投資家を意識したものなのだろう。

ROEとは、Return on Equityの略で、収益性分析で用いられる株価指標のひとつである。
自己資本に対してどれだけのリターンが生み出されているかを示すと言われる。
ROEの算式は、(当期純利益/自己資本)×100=ROE(%)で表される。

このROEは高いほうがもちろん良いのだが、高ければ高いほど良いというわけでもない。
自己資本が少なく負債が多い場合には、ROEが高くなる傾向があり、ROEを追い求め負債を多くすればするほど、倒産などのリスクが高まるからだ。
負債と自己資本のバランスも重要になってくる。
日本経済新聞によれば東証1部上場企業の2013年度ROEの平均は8.6%だったようだ。

中小企業においては、株主が社長やその親族で構成されていることが多いため、上場企業のように外部の投資家を念頭において、ROEなどの指標を意識した経営をすることは少ないかもしれない。
ただ、自身の会社の経営状況の把握のひとつの手段として、ROEなどの指標を一度算出してみるのも良いのではないだろうか。

「刃物まつりから・・・」

刃物のまちと言えばどこが浮かぶだろう。
東海地方に住んでいる人は関と言う人が多いのではないだろうか。
私が関西に住んでいた頃は、刃物のまちと言えば堺を想像したのだが、名古屋に来てからは関と答えるだろう。関は700年ほどの伝統を持つ刃物のまちだそうだ。
というわけで、先日岐阜県関市で開催された刃物まつりに行ってきた。

刃物まつりでは、関市内の45ほどのメーカー、卸売業者などによる「刃物大廉売市」が開催されていて、包丁、はさみ、園芸用品、つめきりなどの刃物が通常価格より安く購入できる。かく言う私もはさみやつめきりなどを購入した。
様々な包丁やはさみなどの刃物が店頭に並んでいるので、見ているだけでも面白かった。行ったことがない人は一度行ってみるのも良いと思う。
また、グルメでは鮎やうなぎが有名で、関の特産品を食べながらお気に入りの店を探すのも良いと思う。
うなぎは、店の前で待っている人が多くて諦めるしかなかったのは残念だったが・・・。

最近というわけではないが、包丁やはさみなど安く購入できるようになっている。特に中国などの海外から輸入されたものは安いようだ。
安いものを買って、消耗品のごとく切れなくなったらまた安いものを買うという考え方もひとつだろう。
一方、値段は2倍3倍になっても、品質の良いものを何年も使い続けるという考え方もある。
職人が作った刃物と安い刃物を購入して、切れ味などを比べてみるのも楽しそうだ。考え方にも変化があるかもしれない。

「次世代自動車」

街を歩いているときなどに電気自動車を見るととても珍しく感じる。
三菱自動車からi-MIEV、日産自動車からリーフが発売された当初は、これからは電気自動車の時代だとニュースを賑わしていたが、電気自動車はどのくらい普及しているのだろうか。

電気自動車の国内販売台数(一般社団法人次世代自動車振興センター統計より)を見てみると、
2006年:15台
2007年:62台
2008年:46台
2009年:1,628台
2010年:7,132台
2011年:13,256台
2012年:16,554台
と徐々にではあるが販売台数を増やしている。
(参考:2012年の国内の新車販売台数は約530万台)。

ハイブリッド自動車のプリウスはどうだったかというと、
1998年:1.8万台(1997年12月初代発売)
1999年:1.5万台
2000年:1.3万台
2001年:1.1万台
2002年:0.7万台
2003年:2万台(2003年9月2代目発売)
2004年:6万台
と、発売から数年間の販売台数は伸び悩んでいたようだが、その後は2009年に20万台を突破し順調に販売台数を伸ばしていった。

電気自動車の航続距離は、日産自動車のリーフで228kmとなっているが、エアコンの使用状況や上り坂など道路状況により実質的には200kmないだろう。
この航続距離とガソリン車よりも価格が高いことなどを考えると、個人的には現時点で購入する気にはなれない。
ただし、技術の進歩によって航続距離は伸びていくだろうし、価格もガソリン車並になれば選択肢のひとつになるかもしれない。

また、トヨタ自動車などは次世代エコカーと言われる燃料電池自動車の開発を進めているが、普及させるまでにはまだまだハードルが高いようだ。
今後どんな自動車が普及するか楽しみだ。普及する自動車によって自動車業界の勢力図も大きく変わるだろう。
信じている。日本の自動車メーカーが、次世代自動車で世界をリードしている姿を。

「移転価格」

国際的な企業や、そうでなくてもグループ内の企業が海外にある場合には、移転価格の問題がしばしば問題になる。
国ごとに税率は異なるので、関連者との取引価格の設定次第で、それぞれの所在国での納税額が変わるからだ。
ちなみに移転価格とは、関連者との取引価格である。

例えば、インドは税率が比較的高いため、厳しい移転価格税制が導入されているようだ。
関連者との取引が1ルピー(約1.7円)でも存在する場合には、移転価格証明書を作成し外部のインド勅許会計士による証明を受けなければならない。そして、各税務年度の終了後に納税申告書と共に提出しなければならない。
この提出義務を怠ると約20万円の罰則が課される。

インドでは国外からの直接投資が増加している中で、外国企業に対する移転価格課税事例も増加の一途を辿っている。
2001年から2008年の8年間で、移転価格調査による更正件数は239件から1,343件に増加(構成比率は23%から52%に増加)している。また、更正金額も約207億円から約7,570億円に増加していて、移転価格リスクは確実に高まってきているようだ。

日本でも移転価格税制は導入されており注意しなければならない。
経済のグローバル化は今後もますます進み、国際取引も増加していくことが予想される。
移転価格リスクも高まるだろうし、移転価格税制がメジャーな税制のひとつになる日が来るのも、そう遠くないのかもしれない。

「アンコールワットからみるカンボジア」

先日、いつかは行ってみたいと思っていたカンボジアのアンコール遺跡へ行ってきた。
カンボジアへは初めて行ったのだが、日本からの直行便はなく、ベトナムのハノイやホーチミンで乗り継ぐ必要があった。
ベトナムのホーチミンまで約5時間半、ホーチミンから約1時間といったところだろうか。アンコール遺跡のあるシェムリアップという町に着く。

アンコールワットは、南北1300m、東西1500mにもおよぶ石で造られた巨大な寺院。ツアーガイドによると、完成まで37年間かかったようだ。
遠くから見るとスケールの大きさに圧倒されるという感じだった。
しかし、アンコールワットを近くで見ると、例えば第1回廊と呼ばれる場所では、ヒンドゥー神話などの物語が彫り刻まれており、彫刻の細かさには繊細さも感じた。
あれだけの石を運んで建造物を造る、彫刻を彫る、37年間かけた当時の人達の熱い思いも・・・。

カンボジアを訪れる前は、内戦や地雷などネガティブなイメージを持っていたのだが、シェムリアップは、ヨーロッパやアジアなどからの観光客も多く、夜でも観光客は歩いておりどちらかというと平和で良い町だった。日本がアンコール遺跡群の修復に協力してきたからだろうか、カンボジア人も友好的で、私にとって印象の良い国になった。

道路は、アスファルト舗装されているといっても、車に乗るとかなり揺れる。下水道設備も整っておらず、生水は飲めない。まだまだ発展途上ではあるが、アンコールワットのような建造物が造れる国なのだから、今後の成長が楽しみな国である。
何十年か後に、発展した姿を見に訪れることができれば幸せだと思う。

「会計監査の啓蒙活動として」

2014年5月に日本公認会計士協会から、「監査業務と不正に関する実態調査」というものが公表されているのをたまたま目にした。

調査結果では、回答者(公認会計士)の約半数が、「不正等との遭遇あり」と回答している。
アンケート対象者に対する回答率が7.5%なので、公認会計士全体の傾向を正確に反映しているとは言えないかもしれないが、それでも多いなと感じた。

「不正等との遭遇あり」とは、
・被監査会社の従業員等による資産の流用・窃盗を発見した
・会計基準から逸脱した財務諸表の故意による表示
などである(中小企業においては会計基準に従った財務諸表を作成する義務はないので、会計基準に従っていないからといってここでいう不正に該当するわけではない)。

また、不正との遭遇の時期では、「0-3年くらい前」が3割弱ほどあったが、驚きはなかった。ニュースにならないだけで、適時開示されているものでも、毎月どこかの会社で不正が起こっているからだ。

この実態調査は、会計監査の実態について、不正という切り口から社会一般に理解してもらうことが、目的のひとつのようだ。
監査は不正を発見することを直接目的としたものではないが、発見すれば当然不正に対応しなければならず、監査人側でも相当の労力を費やす。また、市場から批判にさらされるため相当のプレッシャーを受けたり、監査法人内でのプレッシャーもあるだろう。
社会一般に理解してもらうのであれば、このような監査人の苦悩も表現されれば良かったのではと思うのは私だけだろうか。

「気分転換」

先日、犬山市にある犬山城へ行って来た。
地下鉄の車内広告で犬山城や城下町が宣伝されているのを見たのと、名前は知っていたので行ってみようかと思ったのだ。

お花見シーズンが終わった後だというのに、観光客が多いのには驚いた。
犬山城の前の通りは歩行者天国になっており、出店もあり観光客で賑わっていた。
国宝だから当然と言えば当然なのだろう。

国宝に指定されている城は4つあるのだが皆さんご存知だろうか。
かくいう私も全ては知らなかったのだが…それは、兵庫県の姫路城、滋賀県の彦根城、長野県の松本城、そして愛知県の犬山城である。
彦根城、松本城へは行ったことがあったので、犬山城で3つ目。
残りは姫路城を残すだけとなったので、是非とも制覇したくなった。

犬山城は現存する城の中でも、日本最古の木造天守閣だそうだ。
たしかに、床はぎしぎしと音を立てていていつ床が抜けるか心配になった。
階段も急で、こんなところに住めないと勝手に思っていたのだが、今の時代、復元された城も多く、中にはエレベーターのある城もあることを考えると、すごく貴重な体験をさせてもらった。

国宝犬山城の天守閣から眺める景色は、周りに遮るものがなくいい眺めだった。
犬山城の周りには緑もあり、また風情のある城下町も楽しめた。
いい気分転換になった。普段とは違うものにふれて刺激を受けることも大切だと感じた。
何か良いアイデアが浮かぶことがあるかもしれない。

「新規上場」

最近、ニュース・新聞などで新規上場の話題が取り上げられる機会が増えたような気がする。
昨年から今年にかけて上場したサントリー食品インターナショナルや、ジャパンディスプレイなどは大型案件として有名な話である。

過去からの新規上場会社数を見てみると確かに増えている。
(東証1部・2部とマザーズの上場会社数)
2008年   2009年   2010年   2011年   2012年   2013年
19社     10社     12社     20社    30社     41社
日経平均株価は2012年終わり頃から回復しているのだが、経営者としては2011年あたりから業績が回復しているという実感があったということだろうか。

新規上場と聞くと華やかなイメージがあると思うが、コストと時間がかなりかかるのも事実。
コストとしては、上場審査料が400万円、新規上場料として市場第1部は1500万円、市場第2部は1200万円かかる。
他にも上場までの監査費用や、主幹事会社の上場準備指導料などがある。
会社の規模にもよるが、小規模な会社でも概算で5000万円程度かかると言われる。
さらに上場後にも、取引所に対する年間上場料、監査費用、株主総会開催費用などの上場維持費用がかかる。

もちろん、知名度の向上や、資金調達能力の増大など、上場することによるメリットもある。
これだけのコストを負担してでも、新規上場したいという会社が増えてきたのは、コストなどのデメリットよりもメリットのほうが大きいと感じているからだろう。

「価値観の話」

今月号で石田会計ニュースが100回目ということで、何を書こうかと悩んだのであるが、個人的に感銘を受けた言葉を紹介したいと思う。

それは、「与えなさい。そうすれば、自分も与えられます。」という、聖書の言葉。

夫婦喧嘩はいい例だと思う。
私がこれぐらいのことをしたのに、相手は何もしてくれないという思いを持ったことはないだろうか。
たしかに与えたのではあるが、見返りを求めている時点で、聖書の言葉の行為とはまったく違うと思う。
与えて返ってこなくても平気でいられる、与え続ければいつかは返ってくるだろうということではないだろうか。キリスト教信者ではないが、そういう心持ちが大切だと感じた。

偉そうなことを書いている私も、この言葉を思い出して反省することがある。
人それぞれ様々な価値観を持っていると思うが、この言葉を忘れずに生きたいと思う。

「判断のタイミング」

2月上旬、たまには退屈な時間を楽しむのもいいと思い、1泊2日で高所温泉地に行く予定だった。

御嶽山近くの温泉だったので雪道になると思い、四輪駆動のスタッドレス車をレンタルした。
当日は東海地方も雪が降り、目的地も相当雪が積もっていることは容易に想像できた。
ただ、ウィンタースポーツなどで雪道の運転には慣れていたので、出発時に不安は全くなかったのだ。

下呂市に入ると道路も真っ白だったがまだ不安はなかった。
県道に入りしばらく進み目的地まで30kmぐらいの地点だっただろうか。雪がさらに深くなり、AT車の1番低速のギアで、アクセルをめいっぱい踏み込んでも10kmほどの速度しか出なくなってきた。さらに携帯の電波が圏外になっていて、不安になってきた。

それから10kmを進むのに1時間ぐらいかかっただろう。
目的地まで20kmほどの地点、アウディが立往生していて、道路が塞がれ、その先へ進めなくなった。
運転手と話をしたところ、雪が深くてこの先に進めなくなったとのことだった。

アウディで進めなくなったのなら、私が借りたファミリカーでは到底無理だと悟った。
久しぶりの温泉を楽しみにしていたので非常に残念な気持ちになった。
ただ、アウディが立往生していなかったら、そのまま進み更に山の奥で自分達が立往生することになっただろう。携帯を使うためには10km以上も歩いて戻る必要があった。今考えるとぞっとする。

10kmの速度しか出ない状態になった時に、心のどこかで行けないのではと感じていたはずだが、1日の宿代(キャンセル料)とレンタカー代が無駄になるという思いが判断を遅らせたと思う。

会社経営においても似たようなケースがあるのではないだろうか。ある事業に投資をしたが、うまくいかないまま続けてしまうなど。
今までの投資が無駄になるという思いから判断が遅くなり、傷が深くなることも往々にしてあるのではないだろうか。
判断のタイミングで会社の業績は大きく変化する、判断のタイミングでその後の人生は大きく変化する、改めて感じさせられる出来事だった。