「判断のタイミング」

2月上旬、たまには退屈な時間を楽しむのもいいと思い、1泊2日で高所温泉地に行く予定だった。

御嶽山近くの温泉だったので雪道になると思い、四輪駆動のスタッドレス車をレンタルした。
当日は東海地方も雪が降り、目的地も相当雪が積もっていることは容易に想像できた。
ただ、ウィンタースポーツなどで雪道の運転には慣れていたので、出発時に不安は全くなかったのだ。

下呂市に入ると道路も真っ白だったがまだ不安はなかった。
県道に入りしばらく進み目的地まで30kmぐらいの地点だっただろうか。雪がさらに深くなり、AT車の1番低速のギアで、アクセルをめいっぱい踏み込んでも10kmほどの速度しか出なくなってきた。さらに携帯の電波が圏外になっていて、不安になってきた。

それから10kmを進むのに1時間ぐらいかかっただろう。
目的地まで20kmほどの地点、アウディが立往生していて、道路が塞がれ、その先へ進めなくなった。
運転手と話をしたところ、雪が深くてこの先に進めなくなったとのことだった。

アウディで進めなくなったのなら、私が借りたファミリカーでは到底無理だと悟った。
久しぶりの温泉を楽しみにしていたので非常に残念な気持ちになった。
ただ、アウディが立往生していなかったら、そのまま進み更に山の奥で自分達が立往生することになっただろう。携帯を使うためには10km以上も歩いて戻る必要があった。今考えるとぞっとする。

10kmの速度しか出ない状態になった時に、心のどこかで行けないのではと感じていたはずだが、1日の宿代(キャンセル料)とレンタカー代が無駄になるという思いが判断を遅らせたと思う。

会社経営においても似たようなケースがあるのではないだろうか。ある事業に投資をしたが、うまくいかないまま続けてしまうなど。
今までの投資が無駄になるという思いから判断が遅くなり、傷が深くなることも往々にしてあるのではないだろうか。
判断のタイミングで会社の業績は大きく変化する、判断のタイミングでその後の人生は大きく変化する、改めて感じさせられる出来事だった。