「選択の難しさ」

 先日、ダン・アリエリー著「予想どおりに不合理 行動経済学が明かすあなたがそれを選ぶわけ」(早川書房)という行動経済学に関する本を読んでみました。
著者は、人の購買活動における価格認識について、アンカー(おとり)の影響を受けていることを紹介しています。具体的には、ある雑誌の購読者募集広告を紹介し、①ウェブ版の購読には59ドル、②印刷版の購読には125ドル、③ウェブ版及び印刷版の購読には125ドルの価格を設定した場合、大半の人が③を選択し、残りの人は①を選択したというものです。

 ここでのポイントは②です。②があるために③がより魅力的に映り、選択者としては③が最もお得であると感じてしまうもので、出版社は一見してメリットの無い②を敢えて設定することで消費者に③を選択させようとしているのです(①と③のみとした場合、③を選択した人は極端に減ったそうです)。つまり、ここでは②がアンカーとしての役割を果たしているといえます。

 人はものごとを絶対的な基準ではなく、相対的な優劣で決めるため、購買活動においても選択肢のなかでの相対的比較によってお得か否か(つまり購入するか否か)を決めるそうです。そのため、②と比較して明らかに③にお得感があるため③を選択するのですが、比較対象である②がなくなってしまうと、とたんに③の魅力が減退し、③より価格が低い①を選択する人が多くなるのです。つまり、人の購買活動における意思決定は不合理なのです。

 他にも著書のなかでは人の意思決定がいかに不合理なものであるのかを具体的な事例を挙げて紹介されており、とても興味深く読むことができました。
この本を読むことで私自身もいかに不合理な選択を繰り返していたのかを思い知らされました。表面的な価格に踊らされることなく、私自身が納得できる判断基準の下に選択をしていきたいと思います。

「モノの言い方」

誰かに何かを伝えようとするとき、言い方ひとつで相手に与える印象ががらりと変わります。同じように伝えているつもりでも、相手にすんなり受け入れてもらえる時と、逆にかたくなに否定されてしまう時があると感じたことはありませんか?

最近よく「モノの言い方」についての書籍を目にする機会が多く気になって、読んでみました。その中で、「大人のモノの言い方」の極意は「気配り」と「相手に恥をかかせないこと」だそうです。
例えば仕事中に声を掛けるとき、突然声を掛けることは、おそらく乱暴で唐突な印象を与えます。しかし「少しお時間よろしいですか」と一言添えることでかなり印象が変わります。そのような言葉を「マジックフレーズ」と呼んでいます。話しかけるとき冒頭に入れるとすんなりと本題に入れます。相手の立場や気持ちを考えて大人の気配りをすれば必ず聞く姿勢になってもらえます。
また同時に相手に恥をかかせないことも重要です。人間の根本にある自尊感情を守るように意識して話すことで相手の気分を害することも無くなります。

私は、今まで人と話すとき心掛けていたことがあります。それは文章の終わりを否定ではなく肯定で締めくくることです。例えば「美味しいけど辛かったね」と言うよりも「辛いけど美味しかったね」と表現したほうが柔らかい印象を与え、心地よいと思うからです。これからは、言葉の選び方にも気を配り、大人のモノの言い方が出来るように心掛けていきたいと思いました。