難しいこと

 猛暑日が続いた夏も終わり段々と肌寒くなってきました。

 寒くなってくるといつも思い出すのは税理士試験の合格発表の時のことです。税理士試験は8月初旬の三日間で、4カ月後の12月初旬に合格発表があります。

 試験を受けた直後はやっと1年の戦いが終わったという解放感から結果のことはあまり気にしなかったのですが、寒くなってくると近々訪れる結果に慌てて緊張していた記憶を今でも鮮明に思い出します。

 それだけ私にとって税理士試験はとても難関であり、そのときすべてを賭けたものだったからだと思います。

 それまでの私は自分のできることを出来る範囲でというように安定思考だったのですが、なぜか税理士試験だけはその時の私にとってあまりに無謀なものにも関わらずチャレンジしようという気になりました。

 その理由は単純な言葉でした。試験の説明を聞きに説明会に行ったときのことです。最低でもこの法律1冊分は一言一句丸暗記してもらわないと戦うことすらできません、という試験の内容を聞きとても無理だと諦めようと思った私に先生が、

 『いきなり1冊暗記しろと言われれば誰にとってもかなり難しいことです。しかし、この1行を暗記しろと言われれば頑張れば誰にでもできることだと思います。この1冊の暗記は1行の暗記の積み重ねですから、1行の暗記をクリアできた人なら努力すれば誰にでも1冊の暗記は可能なことを保証します。』

 と言われ、それまでスポーツ以外で真剣に努力をしたことがなかった私はスポーツと同じような気がして、勉強の方の自分の可能性を試してみたくなったということです。

 あの時は絶対に無理だと思っていた1冊分の暗記も努力した結果、一言一句暗記できましたし、税法1科目につき1冊なので3冊分以上の暗記が出来ました。

 今でも世の中の難しいと言われていることの大半は、簡単なことの集合体でたくさんの簡単なことを努力でクリアしていけば難しいことに対しても戦えるのではないかなと思っています。

 まだまだ立ち向かえないような難しい問題が山ほどありますが、肝心なのはチャレンジしようとする気持ちだと思いますので、これからもあきらめないで解決方法を探していきたいと気持ちが引き締まりました。

by 村上