「東芝の不正会計」

9月7日に、東芝の2015年3月期決算が2ヶ月遅れで公表された。
当初1,200億円の黒字を見込んでいたようだが、378億円の赤字だった。

同時に過年度の決算修正も実施し、過去7年間の税引前損益を2,248億円も減額した。
監査法人で働いていたこともあって、東芝の不適切会計問題はかねてから気になっていた。

東芝は上場企業であり、上場企業は証券市場や利害関係者など影響が多岐にわたることから、公認会計士による監査を受ける必要がある。
もちろん東芝も大手監査法人による監査を受けていた。なのに、なぜ不正が起きたか。

東芝は、経営トップが主導して決算内容を操作したと言われている。これは、典型的な経営者不正と言われるものである。
監査人側からみると、経営者不正は一旦生じると発見に非常に時間がかかり、被害額も大きくなる傾向にある。
また経営者は企業の最高権力者であることから、その不正を社内で予防・発見することは極めて困難なのである。

監査法人が東芝に協力していたのか、監査法人が騙されていたのか、今のところ定かではない。
ただ、監査法人からすれば東芝から受け取る報酬は大きく、優良顧客であったと推測されることから、言うべきことが言えなかった可能性もある。

法定監査に従事する者として、報酬を受け取っている監査先に言うべきことを言う、ということに気を使うのはわかる。
経営者や監査役とのコミュニケーションは必要だろう、一度認めてしまうとどんどんエスカレートしてしまう。
税務とは違う世界で興味のある方は少ないかもしれないが、この不正会計問題をきっかけに、監査の現場で言うべきことを言う、ということの重要さを再認識させられた。