中退共のお得な利用方法

近年では、退職金制度を廃止する企業が増えてきました。
終身雇用が減少し、転職が頻繁に行われるこのご時世では当然のことかもしれません。
ただ、税金や老後の生活を考えるとあまり得策ではないと感じます。

中小企業では、国が運営している「中小企業退職金共済(中退共)」という制度が有名ですが、既に加入している会社においても掛け金が1人当たり5,000円から1万円程度と少額で、積極的に利用されているケースはまれです。
しかし、退職金には社会保険がかからず、勤続1年あたり40万円以下であれば税金はかからないというように、かなり優遇されています。

例えば、退職金のない年収500万円の人が、年収のうち年間36万円を中退共の掛け金に振り替えるとどうなるでしょうか。
(計算上、社会保険は給与の15%とし、扶養者等はないものとします。)

退職前は税金等を差し引いた年間手取りは26万円減少します。しかし、退職時に36万円もらえるので、実質的な手取りは10万円増加していることになります。これが20年続くと、200万円手取りが増え、720万円の老後資金の積み立てができます。
また、毎年の給与が減少することで会社の社会保険料負担額が年間5万円削減できそうです。人数が多ければ、かなりのコストダウンになりますし、加入することで助成金を受け取ることも可能です。

このように、同じ支払額でも、支払方法次第で手取りが増え、また会社のコストを削減することができます。毎年、昇給の面談時にでも、人件費総額からどれだけ退職金に振り替えるか話し合いをされてはいかがでしょう。
「加入後1年未満で退職すると退職金はもらえない」等の注意点はありますが、このような取り組みにより、従業員の定着率が高まったり、リクルート活動にも有利に働くのではないかと思います。

by 加古宗利