「医療法人の動向」

 公認会計士による監査というと、一般的には上場企業が受けるもの、大企業が受けるものというイメージを持たれているだろう。
 実は、平成29年4月2日以降に開始する会計年度から、医療法人においても公認会計士による監査が義務化されている。
 ただし、全ての医療法人ではなく、医療法人のうち負債の額が50億円以上、又は収益額の合計が70億円以上であるものなど、一定規模以上の医療法人に限られる。

 医療法人は株式会社等と比較して経営の透明性が低く、法令等遵守体制の構築が十分に担保されていない、などの理由による。
 医療法人により違いはあるものの、収入の大半が税金で賄われているため、不正に税金を受け取っていないか第三者にチェックして欲しいということなのだろう。

 監査法人で勤務している元同僚などの話を聞くと、監査法人など監査業界においても人不足が恒常的になっているようだ。
 どれくらいの医療法人が監査対象になるのかわからないが、1,000法人ぐらいだろうか。
 ただでさえ人手不足と言われているのに、これだけの医療法人の監査を監査業界として受託できるのだろうか。
 人手不足を残業でまかなうという、いわゆるブラック会社化するかもしれない。
 一方で、仕事を増やしたい、事業を拡大したい公認会計士にとってはビジネスチャンスだ。

 また、医療法人側からすると、社会的な信頼性を得られる、内部統制の整備・運用の精度を高められる、不正の防止・発見効果が上がるなどメリットはあるが、コスト負担も大きい。
 現時点で監査対象ではない医療法人は、監査対象になる条件に該当しないように運営していくのも選択肢の一つだろう。